親指のつけ根が痛くなる母指CM関節症。手術しか方法がないと言われている方も、リハビリを検討してみてはいかがでしょうか?手術を回避できるかもしれません。ここでは、当院でのリハビリの取り組みを紹介いたします。
2018年、オランダから母指CM関節症に対するリハビリの有効性が報告されました。これによると、3ヶ月間集中的にリハビリを受けた患者さんのうち、85%の方が手術せずに済んだとのことです1。これは今までの報告よりも良好な結果であり、当クリニックでも、変形の程度に関わらず、まずはリハビリを中心とした治療を行っています。
患者さんの手の状態にあわせ、段階的に進めていきます。
1.痛みの強い時期
スプリントを装着し、関節を安静にします。
2.痛みがおさまってきたら
かたくなった関節・筋肉のストレッチを行いつつ、特定の筋肉のトレーニングを開始します。
3.関節・筋肉のかたさが取れてきたら
筋力トレーニングを進めていきます。スプリントは、徐々に柔らかいものへ変更していきます。
4.筋力がついたら
スプリントを外す時間を徐々に増やしていきます。
母指CM関節症に対するスプリント治療の有効性が数多く報告されています。
当クリニックでは、患者さんの手の形・生活スタイルなどにあわせ、ハンドセラピストがオーダーメイドで作成しています。
既製品と違い、症状にあわせて細かな修正や変更が可能なことがメリットです。
スプリントは痛みの緩和だけでなく、変形の予防・矯正効果もあるとされており、早めの装着をおすすめしています。
ストレッチや筋力トレーニングなどのエクササイズを取り入れている施設は多くありませんが、スプリントのみより、エクササイズを組み合わせた方が効果的とされています2。
母指CM関節症になると、関節をささえる靭帯や関節をおおう袋(関節包)、筋肉がかたくなるため、ストレッチを行います。
関節が柔らかくなってきたら、関節を安定させ、バランスを改善するための筋力トレーニングを開始します。
”手に筋トレ?”と思われるかもしれません。
手の筋肉ひとつひとつは小さいですが、他の関節よりはるかに多い20以上の筋肉が手には作用しており、お互いが複雑にバランスをとっています。
母指CM関節に作用する筋肉はおもに9つありますが、特に重要な筋肉が2つあります。
母指CM関節症は靭帯のゆるみによって関節が亜脱臼してきます。
イラストの2つの筋肉は、亜脱臼した骨同士を正しい位置に移動させる力があるため、リハビリ初期から積極的にトレーニングを行っています。
もちろん、痛みを引き起こすような無理なリハビリは行いません。
手の構造を熟知したハンドセラピストが対応しますので、どうぞご安心下さい。
変形があっても、手術以外の方法で症状が改善する可能性があります。あきらめず、当クリニックへご相談ください。
(文責・イラスト:院長)
Exercise Therapy in Addition to an Orthosis Reduces Pain More Than an Orthosis Alone in Patients With Thumb Base Osteoarthritis: A Propensity Score Matching Study.
Wouters RM, Tsehaie J, Slijper HP, Hovius SER, Feitz R; Hand-Wrist Study Group, Selles RW. Arch Phys Med Rehabil. 2019 Jun;100(6):1050-1060.