母指CM関節症の治療 〜まずはリハビリ!〜|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

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母指CM関節症の治療 〜まずはリハビリ!〜|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

母指CM関節症の治療 〜まずはリハビリ!〜

親指の付け根が痛くなる母指CM関節症。「治りません」「手術しかありません」と言われる事も多いようです。当クリニックでは、最初の治療としてリハビリを積極的に行っており、その内容をここで紹介させていただきます。

リハビリ(以下ハンドセラピィ)が母指CM関節症の手術率を下げるという報告が複数あります1,3

レントゲン画像で変形が進行している場合でも、装具やハンドセラピィで痛みの軽減・機能改善が得られる患者さんは少なくありません。

そのため当クリニックでは、痛みの強さや画像での変形程度に関わらず、まずはハンドセラピィを行うこととしています。

当クリニックでのハンドセラピィの進め方

1.スプリントの装着

母指CM関節症スプリント(ハード)

母指CM関節症スプリント(ソフト)

スプリント(装具)を装着し関節を固定することで、炎症・痛みの沈静化を図ります。

当クリニックでは上肢専門の作業療法士(ハンドセラピスト)が患者さんの手にあわせて作成しています。

スプリントは痛みの緩和だけでなく、変形の予防・ある程度の矯正効果があるとされており、早めの装着をおすすめしています。

2.ストレッチ

痛みにより固くなった筋肉をストレッチしていきます。

3.筋力トレーニング

痛みがおさまってきたら、関節を安定させる作用を持つ筋肉を中心に、筋力トレーニングを行っていきます。

母指CM関節には9つの筋肉が作用しますが、この中でも重要なのが、イラストにしめした第1背側骨間筋と母指対立筋です。
この2つの筋肉をトレーニングすることで、不安定な関節を正常に戻す方向に力が加わります。

痛みが取り切れず、この筋力トレーニングに進めない場合、関節へのステロイド注射を行うことがあります。

4.スプリントを外していく

筋力がついてきたら、徐々にスプリントを外す時間を増やしていきます。
リハビリ期間は概ね3~6ヶ月です。

当クリニックでは、「痛い親指とつきあっていく」のではなく、「痛みなく使える親指」を目標としてリハビリを行っています。

手の構造を熟知したハンドセラピストが対応しますので、痛みを引き起こすような無理な手技は行いませんのでご安心ください。

ストレッチや筋力トレーニングはご自身でも行なえます。詳しくはコチラを御覧ください。

じゃあ根気よくリハビリを続ければ必ず治る?

残念ながら100%ではありません。

確かにハンドセラピィは手術率を低下させますが、1年をすぎるとハンドセラピィを受けても受けなくても変わらないというデータがあります。
セラピィ回数を多く必要とする人ほど手術へ至る確率は高い(=重症)とも報告されており、ハンドセラピィにも限界があるのです。

当クリニックのブログをご覧になり、「他の病院で手術を勧められたが、それは嫌なのでリハビリで治したい」と受診される方がおられます。

治療は階段を登るように進めていくものですので、最終的に手術が必要となる可能性(10~20%)をご理解いただいた上でリハビリを受けていただければと思います。

いつまでリハビリを続ければいい?

明確なデータはないのですが、当院では現在までの治療経験を踏まえ、半年程度はハンドセラピィやステロイド注射といった手術以外の治療を受けていただき、改善がない~悪化するといった方に手術治療の提案をしております。

でもどうしても手術は受けたくない!

確かに手術を受けるという決定は簡単ではないと思います。

そこでハンドセラピィなど手術以外の治療と手術治療の橋渡しをするものとして、当クリニックでは再生治療の一つであるPRP治療を行っております。

100%手術を回避できるわけではなく、自費診療ではありますが、手術の確率を少しでも下げたい!という方には選択肢の一つになるかと考えています。詳しくはコチラを御覧ください。


変形があっても、手術以外の方法で症状が改善する可能性はあります。あきらめず、お近くの手外科専門医へご相談ください。

(文責・イラスト:院長)

関連ブログ

参考文献

  1. Outcome of a Hand Orthosis and Hand Therapy for Carpometacarpal Osteoarthritis in Daily Practice: A Prospective Cohort Study.
    Tsehaie J, Spekreijse KR, Wouters RM, Slijper HP, Feitz R, Hovius SER, Selles RW. J Hand Surg Am. 2018 Nov;43(11):1000-1009.e1. 
  2. Exercise Therapy in Addition to an Orthosis Reduces Pain More Than an Orthosis Alone in Patients With Thumb Base Osteoarthritis: A Propensity Score Matching Study.
    Wouters RM, Tsehaie J, Slijper HP, Hovius SER, Feitz R; Hand-Wrist Study Group, Selles RW. Arch Phys Med Rehabil. 2019 Jun;100(6):1050-1060. 

  3. Is Hand Therapy Associated With a Delay in Surgical Treatment in Thumb Carpometacarpal Arthritis?
    Portney DA, Stillson QA, Strelzow JA, Wolf JM.J Hand Surg Am. 2023 Jul 29:S0363-5023(23)00296-4. 

 

 

 

前田 利雄

記事監修

院長 前田 利雄
(まえだ としお)

  • 昭和大学医学部卒 医学博士
  • 日本手外科学会認定 手外科専門医・指導医