突き指したら指が伸びない!マレット損傷かもしれません|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

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手肘疾患の解説ページ(ブログ)

突き指したら指が伸びない!マレット損傷かもしれません|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

突き指したら指が伸びない!マレット損傷かもしれません

指先に物があたったり、力を入れたあと第一関節が伸びなくなった場合、マレット損傷の可能性があります。

マレット損傷って何?

第一関節に急に曲がる力が加わることによって、骨と腱がはがれたり(腱性マレット)、はくり骨折(骨性マレット)が起き、自力で第一関節が伸ばせなくなるケガです。

放置するとどうなるの?

程度が軽ければ、腱や骨が自然治癒することもありますが、指の伸びは悪くなります。

放置すると、指を曲げる力と伸ばす力のバランスが崩れます。第一関節は曲がり、第二関節は反ってしまうスワンネック(白鳥のくび)変形につながります。

なんで指が伸びなくなるの?

”Baseball finger”とも呼ばれ、ボールなどが指先に当たることによって発生するのが典型的です。

ズボンをつかんで引っ張り上げるといったちょっとした動作でも発生します。

これは、指を曲げる力は伸ばす力と比べて強く、指を伸ばす腱が非常に弱いためです。

症状は?

第一関節がのびない

痛み・はれ

骨から腱がはがれる腱性マレットの場合、痛みがないことも多いです。

そのため、軽い突き指だろうと放置してしまい、指の曲がりが強くなってから受診される方もいらっしゃいます。

第二関節が曲がりにくい

ケガから時間が経つと、指を伸ばす力が第二関節の方に集中してくるため、第二関節が曲がりにくくなったり、反ってきます(スワンネック変形)。

マレット損傷は指をのばす腱の損傷ですが、放置すると最終的に指が曲げにくくなる可能性があるのです。

レントゲンしか検査はないの?

腱性マレットでは骨折がないため、レントゲンで異常はありません。この場合、エコー検査が役立ちます。

外から第一関節を曲げると、通常指をのばす腱(伸筋腱)の動きが観察できますが、腱性マレットでは、この腱の動きがなくなります。

治療を行い、腱と骨がついてくると、腱が動くようになりますので、治り具合が目で見えるのもエコー検査の利点です。

治療法は?

どのような場合に手術を行うかは、現在でも議論の余地があり2-4、医師によって異なりますが、当クリニックでの治療法を説明いたします。

お子さんの場合、手術が必要となることはまずありません5

スプリント治療

腱性マレットでは、このスプリント治療が基本となります。第一関節が曲がらないように固定し、腱と骨がつくのを待ちます。

当クリニックでは、終日の固定を6-8週間していただき、さらに4週間夜間のみ固定をしていただきます。

ケガから1ヶ月程度たっていても、腱性マレットであれば、スプリント治療で治ることが多いです6

剥離骨折の場合でも、骨折部分が小さく、関節のずれがなければ、スプリント治療が可能です。

手術治療

骨性マレット

  • 関節に及ぶ骨折や関節のずれが大きい場合、手術を考慮します。ワイヤーでの固定やプレートでの固定など、様々な方法があります。

ケガから時間がたっている場合

  • ケガから数ヶ月以上たっている場合、通常の手術では治らないことがあります。患者さんの状態によって、適切な手術方法を提案いたします。

    関節自体がかたくなる拘縮という状態や、スワンネック変形をおこしている場合、関節を柔らかくしたり、崩れた指のバランスを出来るだけ修正するため、リハビリを行う場合もあります。

指は元通りになる?

いずれの治療法でも、第一関節の伸びにくさは残ることがほとんどですが、角度は5~7度とごくわずかですので、手の機能に問題はありません。

マレット損傷の治療では、比較的長期間関節を固定しますので、固定を外してしばらくは、関節のかたさを感じると思います。

指の機能回復に重要なのは、固定している時から、第二関節をよく動かすことです。第二関節を動かしても、ケガの部分に影響はないことがわかっています。

指を大事にしすぎると、最終的に第二関節の障害によって、手が使いにくくなる可能性がありますので、注意が必要です。

ケガの直後では、痛みや変形が軽く、突き指だろうと放置してしまう方もいらっしゃいます。

時間が経つほど、指の曲がりが強くなったり、バランスが崩れ、必要な治療が複雑になる可能性がありますので、早めの受診をおすすめいたします。

(文責:院長)

参考文献:

  1. Current concepts: mallet finger.
    Alla SR, Deal ND, Dempsey IJ. Hand (N Y). 2014 Jun;9(2):138-44.

  2. Mallet fracture.
    Moradi A, Kachooei AR, Mudgal CS. J Hand Surg Am. 2014 Oct;39(10):2067-9. 

  3. Surgical and Nonsurgical Management of Mallet Finger: A Systematic Review.
    Lin JS, Samora JB. J Hand Surg Am. 2018 Feb;43(2):146-163.e2.

  4. Soft-Tissue Mallet Injuries: A Comparison of Early and Delayed Treatment.
    Altan E, Alp NB, Baser R, Yalçın L. J Hand Surg Am. 2014 Oct;39(10):1982-5. 

  5. Outcomes of Splinting in Pediatric Mallet Finger.
    Lin JS, Samora JB. J Hand Surg Am. 2018 Nov;43(11):1041.e1-1041.e9.

  6. Mallet finger: results of early versus delayed closed treatment.
    Garberman SF, Diao E, Peimer CA. J Hand Surg Am. 1994 Sep;19(5):850-2.

前田 利雄

記事監修

院長 前田 利雄
(まえだ としお)

  • 昭和大学医学部卒 医学博士
  • 日本手外科学会認定 手外科専門医・指導医