指の骨折 〜その固定、正しいですか?トラブルを避けるために〜
- 2020年9月23日
- 手の病気・ケガ
手は体の末端にあるため、骨折をしやすい場所です。安易な治療によって、動きの制限や変形が残ってしまい、手術が必要となる事もあります。ここでは、指の骨折を固定する場合の注意点などについて解説いたします。
指の骨折なんて大したことないでしょ?
実はそうではありません。「骨はついたけど、使いにくい」指になることがあるのです。
指を自由に動かすためには、適切な骨の長さ・形、指を伸ばしたり曲げたりする腱・筋肉の絶妙なバランスが必要なのです。
そのため、指を構成するパーツのひとつでも崩れてしまうと、自由な動きが損なわれてしまい、他の指にまで影響することもあります。
例えば、小指の骨折が変形したまま治ると、曲がりが悪くなる場合があります。すると薬指の曲がりまでそのうち悪くなり、握力が落ちる、といった具合です。
正しい固定ってどんなの?
指の骨折の多くは手術以外の治療が行われ、簡単な印象がありますが、決してそうではありません。固定方法やリハビリなど細心の注意を払わなければならないのです。
いろいろな骨折がありますが、ここでは基節骨(付け根の骨)骨折を例にあげます。
骨折より手前は、内在筋の筋力により曲がり、骨折より先は、指を伸ばす腱(伸筋腱)に引っ張られます。この結果、骨折部分が反ってしまいます。
では正しい固定とはどんなものでしょうか?
間違った固定
骨折の固定というと、「まっすぐに固定する」というイメージがないでしょうか?
この写真は極端な例ですが、これに近い固定を時々見受けます。これは間違いです。
この固定だとイラストのように、骨折部分が反ったまま治ってしまい、伸筋腱はゆるみます。
その結果、MP関節(付け根の関節)の曲がりが悪くなり、PIP関節(第二関節)が伸びにくくなります。動物の湾曲した爪に似ていることから、これを(偽性)かぎ爪変形と呼びます。
正しい固定
固定材料としてギプスや副木・スプリントなどありますが、これが正しい・安全な固定角度です。
MP関節をまげた状態に固定することで、骨折部分の反りを防ぎ、伸筋腱の緊張を保つことで、しっかり曲げ伸ばしが出来る指が出来るのです。
いつまで固定するの?
骨折治療のゴールは、骨がくっつく事だけでなく、使える指に戻すことです。そのためには、できるだけ早く動かす事が重要となってきます。
せっかく固定したのに早く動かしたら、骨折がズレちゃうんじゃないの?と心配されるかもしれません。
しかし骨折後3~4週の時点で、レントゲンではまだモヤモヤと新しい骨が確認できる程度なのですが、注意しながら動かせば、ズレない程度の強度はあります。
そのため、この時期にリハビリを開始する事が重要であり、レントゲンで完全に骨がつくのを確認するまで待ってからでは遅いのです。
当クリニックでは、医師・ハンドセラピストのもと、慎重にリハビリを進めますので、ご安心ください。
たかが指、されど指
他にも注意すべき点はたくさんありますが、指の骨折治療が決して簡単ではないことを知っていただければ幸いです。
治療には正しい知識と技術が必要です。不幸にも指を骨折してしまったが、治療に不安がある方、お近くの手外科専門医受診をオススメします。
(文責:院長)