ばね指の手術は安全なの?
- 2020年5月3日
- 手の病気・ケガ
ばね指の治療を受けているが、何度も再発してしまう。そのような場合、手術が勧められますが、手術と聞くと不安になられる方も多いと思います。
手術はばね指の最も確実な治療法で、再発はまずありません1。手術方法には、以下のものがあります。
腱鞘切開術
腱鞘を切開し、腱の通りを良くします。手術は局所麻酔で行い、所要時間は10分程度です。
この手術は腱の通りを良くするだけですので、症状が長く続いていた方などは、痛みが取れるまで時間がかかる場合があります。
手術後に第二関節が伸びにくくなったり、痛みが新たに出ることがあります。多くは自然に改善しますが、痛みが強い場合、ステロイド注射やリハビリが必要となる場合があります。
手術後の症状、合併症などについては、こちらもご覧ください。
経皮的腱鞘切開術
皮膚を切開せず、注射針や特殊な器械を使用して行う手術も行われています。傷がほぼ出来ないのがメリットですが、良いことばかりではありません。
腱鞘のすぐ隣には、血管や神経が通っています。特に親指や小指では、腱と神経が交差している場合があり、経皮的手術では損傷してしまう可能性があります2。
当クリニックでは、確実性・安全性を最優先とし、経皮的手術は基本的に行っておりません。どうしても希望される方には、リスクをご説明し、エコーガイド下の手術を行います。
屈筋腱部分切除術
ばね指がひどくなると、腱鞘だけでなく、腱自体も太くなります。第二関節のかたさ・曲がりが強くなり、通常の腱鞘切開術では改善しないことがあります。この場合、腱鞘の中を通る腱を部分的に切除します。
第二関節を曲げる浅指屈筋腱は、ふたつの線維に分かれており、このひとつを切除します。残りはつながっていますので、手術後の指の動きには問題ありません3。
ばね指の手術は、腱鞘を切開するだけのものが大半で、行う操作は非常にシンプルです。
しかし、”シンプル=簡単” ではありません。
手はミリ単位で多くの重要な構造が密集しているため、安易な手術は思わぬ合併症を招く恐れがあります。手の構造と機能を熟知した、手外科専門医の手術を受けることをおすすめいたします。
(文責:院長)
参考文献:
-
Tendon disorders of the hand and wrist.
McAuliffe JA. J Hand Surg Am. 2010 May;35(5):846-53 -
Evaluation of Percutaneous First Annular Pulley Release: Efficacy and Complications in a Perfused Cadaveric Study.
Hoang D, Lin AC, Essilfie A, Minneti M, Kuschner S, Carey J, Ghiassi A. J Hand Surg Am. 2016 Jul;41(7):e165-73. -
Trigger finger treatment by ulnar superficialis slip resection (U.S.S.R.).
Le Viet D, Tsionos I, Boulouednine M, Hannouche D. J Hand Surg Br. 2004 Aug;29(4):368-73.