長時間自転車に乗っていると、手がしびれることはないでしょうか?手のひらの小指側には、ギヨン管という神経のトンネルがありますが、ハンドルでこの部分が圧迫されている可能性があります。ここでは、しびれの原因・治療・対処法などについて解説します。
手のひらの小指側の肉球(小指球)部分には、イラストのように尺骨神経が通っています。
神経は枝分かれしながら、骨と靭帯に囲まれたトンネルの中を通っており、このトンネル部分をギヨン管と呼びます。
このトンネルは非常に狭いため、圧迫によって神経がダメージを受けやすく、様々な症状を出します。これをギヨン管症候群と呼んでいます。
自転車に長時間乗られる方に発生するものは、サイクリスト麻痺と呼ばれることもあります。
写真のようなハンドルの握り方ですと、神経が圧迫されやすいので、注意が必要です。
尺骨神経は、小指と薬指半分の感覚を担っており、また手の細かい動作を担当する内在筋というたくさんの筋肉にもつながっていますので、圧迫によって以下の症状が出ます。
小指と薬指半分がしびれ・痛みがでます。同じような症状をだす病気の肘部管症候群と異なり、手の甲側はしびれません。
神経がダメージを受けると、内在筋に命令が届きにくなり、
といった症状が出てきます。
ギヨン管は複雑な構造ですので、圧迫される場所によっては、しびれはないけど力が入らないといった場合もあります。
しびれを放置していると、前述したように筋肉にも影響が及び、ブレーキで力が入りにくくなるなど、事故にもつながりかねません。
しびれを感じたら、症状がおさまるまで休憩をしましょう。ハンドルを握る位置をこまめに変えたり、乗車姿勢を見直すことも有効です。
ここでは自転車のハンドルによる圧迫を例に説明しましたが、他に以下の原因が考えられます。
ギヨン管症候群は比較的まれな病気ですが、放置していると治りにくくなったり、手術が必要となる場合もあります。おかしいなと思ったら、お近くの手外科専門医受診をおすすめいたします。
(文責・イラスト:院長)
Ulnar tunnel syndrome.
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Guyon canal: the evolution of clinical anatomy.
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