ブシャール結節の手術 〜人工関節置換術〜
- 2021年9月15日
- 日帰り手外科手術
指が痛くなる原因として多いのが、DIP関節(第一関節)におこる「ヘバーデン結節」ですが、PIP関節(第二関節)の「ブシャール結節」もあります。
ヘバーデン結節の手術は、関節を固定するのがスタンダードですが、ブシャール結節の場合、関節を固定してしまうと、指の機能が大きく低下してしまいますので、動きを温存することの出来る手術が望ましいのです。それが「人工関節置換術」です。
人工関節って何?
いたんだ軟骨や骨を取り除き、金属などで出来た関節に取り替える手術で、高い除痛効果が期待できます。
膝や股関節にはよく行われる手術で、ご存知の方も多いかと思いますが、指にもあります。
どんなとき、どんな人に手術するの?
変形や痛みがひどく、リハビリや注射などで良くならない場合に検討されます。
膝や股関節の人工関節は、20年以上長持ちするのが普通ですが、指の人工関節は耐久性の問題が完全に解決されておらず、60歳以上の方に行う事が多いです。
どんな手術?
人工関節のデザインや材質はさまざまですが、当クリニックでは、シリコン製の人工関節を使用しています。手術手順をお示しします。
手のひら側の皮膚を切開し、神経や腱をよけて、関節を露出します。
いたんだ関節の軟骨・骨を除去し、かわりにシリコンのインプラントを挿入します。
骨の内部(髄腔)に専用器具で穴を開け、インプラントを差し込みます。股関節や膝関節と異なり、インプラントと骨は固定しません。
当クリニックで行った手術のレントゲン写真です。
手術後のリハビリも大切ですので、上肢専門のハンドセラピスト(作業療法士)が対応いたします。
手術すれば、完全に元通り動くようになるの?
残念ながらそうではありません。全く動かなかった関節が、完全に握り込めるようになるのは非常にまれです。
手術後の可動域(関節が動く範囲)は、手術前の可動域に左右されます。おおむね、手術前の可動域プラス0~10度くらいと考えていただければ良いかと思います1。もともと関節が柔らかい方は、もう少しよくなる印象をもっています。
ただ、痛みを取る効果は非常に高いです。
患者さんの第一の悩みは痛みであることが多く、満足度は高い事が多いのです。
長持ちするの?
膝や股関節の人工関節ほど長持ちはしないというのが現状です。手術を受けられる方の活動性にも左右され、重労働をされる方、若い方には向きません。
10年程度経過すると、人工関節の破損、ゆるみなどが発生する事が報告されています。
「じゃあ、だめじゃない!」と思われるかもしれません。
しかし、人工関節の破損やゆるみと言った現象が、必ずしも痛みや再手術につながるわけでもないのです。
当クリニックで使用しているシリコン製の人工関節は、時間の経過とともに、人工関節のまわりに新しいクッションのような組織が出来てきます。
そのため、クッションの中にある人工関節自体が壊れてしまっても、痛みが発生することはあまりありません。
実際、痛みがなく、生活にも全く支障がない方で、定期検診でレントゲンをとったら、シリコン人工関節の破損がたまたま発見された、というケースもあります。
再手術なんて怖い!
再手術が必要な方は多くなく(10年で10%という報告があります)、万が一再手術となっても、シリコン人工関節であれば、骨を削ったりすることなく、あらたな人工関節を差し込むだけですので、比較的容易です。
ブシャール結節は痛みだけでなく、動きの悪化によって、手の機能に大きな障害をもたらす事があります。人工関節置換術は、どなたにもオススメ出来る手術ではありませんが、痛みをとるという意味では、効果が非常に高い手術です。
関節の変形の程度によっては、より侵襲の低い手術もあります。当クリニックでは、患者さんと十分な相談の上、手術を提案させていただいています。
長年、ブシャール結節に悩まれている方、お近くの手外科専門医に相談されてはいかがでしょうか?
(文責・イラスト:院長)
参考文献:
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Long-term results of Swanson silicone arthroplasty for proximal interphalangeal joint osteoarthritis.
Bales JG, Wall LB, Stern PJ. J Hand Surg Am. 2014 Mar;39(3):455-61.