母指CM関節症の手術方法|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

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母指CM関節症の手術方法|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

母指CM関節症の手術方法

母指CM関節症は、スプリントやリハビリ、注射といった保存治療により多くの方は改善します。しかしどうしても症状が取れない場合、手術治療を検討します。ここでは、代表的な手術方法をご紹介いたします。

1.変形が進行している場合:関節形成術

母指CM関節は、土台の大菱形骨、上に乗っかる第一中手骨から構成されます。

関節の軟骨がほぼ消失していたり、骨の変形が強い場合、「関節形成術」を行います。

大菱形骨を摘出し、自分の腱やインプラントを用いて、第一中手骨を吊り上げます。
骨同士の接触がなくなり、出来たスペースに自分の腱を充填することで、新たな関節が出来、痛みが改善します1-2

手術手順は、以下のイラストをご覧ください。

当クリニックでは、昭和大学整形外科の川崎恵吉教授が考案された方法(ハイブリッド法)を行っており、良好な結果がすでに報告されています3

「自分の腱」「ボタンと糸で構成されるインプラント」の2つで第一中手骨を吊り上げる事により、関節の安定性を上げています。

従来は手術後1ヶ月程度の固定が必要でしたが、この方法により、手術後1~2週間で固定を外す事が可能となりました(夜間や外出時は固定をしていただきます)。

2.変形が比較的軽度な場合:骨切り術

母指CM関節症では、2つの骨をつなぐ靭帯がゆるんでおり、関節が不安定になっています(亜脱臼)。

第一中手骨の形状を骨切りによって変え、関節に加わる力の方向を正常に近づけるのが、「第一中手骨骨切り術」です。

ご自分の軟骨を生かせるのがメリットですが、この手術が出来る条件として、
 ・軟骨が比較的残っている(MRIなどで評価します)
 ・亜脱臼が戻せる(透視装置などで確認します)
といった要素があります。

骨切りした骨を、チタン製のプレートで強固に固定することにより、関節形成術と同様、手術後1~2週間の固定で済みます。

関節をささえる靭帯のゆるみが強い場合、腱を用いた靭帯再建手術を加える事もあります。この場合、手術後の固定期間は少し長くなります。

3.変形がない場合:靭帯再建術

若い方に多いのですが、軟骨のすり減りも、骨の変形も一切ないのに痛いという方がおられます。

原因は生まれつきの靭帯のゆるさである事が多いです。ほとんどの方は、装具やリハビリ治療を徹底して行えば良くなるのですが、半年以上治療を行っても改善がない場合、手術を検討します。

軟骨は正常なので、骨を取り除いたり切ったりはせず、ご自分の腱で新しい靭帯を作ります4

関節を固定したワイヤーは4〜6週間で抜去し、リハビリを開始します。

どうしても手術したくない!

手術はどうしても怖い、短期間でも手術後の安静によって仕事に支障をきたす、と行った方にはPRP(PFC-FD)療法があります。

これはご自身の血液を採取し、血液中の血小板に含まれる成長因子を関節へ注射するという方法です。
自費診療となりますが、ご自身の血液から作成するものでリスクがほぼなく、注射後の安静期間もないので、生活やお仕事への支障を最小限とすることが出来ます。

詳しくはコチラをご覧ください。

まずはハンドセラピィ!

母指CM関節症の手術方法を解説させていただきましたが、手術が必要となる方は、全体の20-30%とされています。手術をしないで済むなら、それに越したことはありません。

当クリニックでも、安易に手術をオススメすることはしておらず、リハビリを中心とした手術以外の治療を積極的に行っています。詳しくは以下をご覧ください。

母指CM関節症のリハビリ 〜手術を回避できるかもしれません〜

(文責・イラスト:院長)

参考文献:

  1. Ligament reconstruction tendon interposition arthroplasty for basal joint arthritis. Rationale, current technique, and clinical outcome.
    Tomaino MM. Hand Clin. 2001 May;17(2):207-21. Review.

  2. Suture Suspension Arthroplasty for the Treatment of Thumb Carpometacarpal Arthritis.
    Weiss AC, Kamal RN, Paci GM, Weiss BA, Shah KN. J Hand Surg Am. 2019 Apr;44(4):296-303. 

  3. 母指CM関節症に対するLRTI法とSuture-Button suspensionplastyの併用手術―Hybrid suspensionplasty.
    川崎恵吉, 稲垣克記,根本哲也,筒井完明,黒田拓馬,坂本和歌子
    日本手外科学会雑誌 34(6): 1065-1068, 2018.

  4. 疼痛の原因として関節不安定性が疑われる母指 CM 関節症に対する新しい靭帯再建術.
    萩原祐介,稲田有史,諸井慶七郎,森本 茂,吉田 竜, 中村達雄
    日本手外科学会雑誌 36(6): 927-931, 2020.