肘の外側が痛い! それホントにテニス肘ですか?
- 2020年11月27日
- 手の病気・ケガ
目次
肘の外側が痛くなる病気として、テニス肘が有名です。テニス肘と診断されて治療を受けているが、なかなか良くならない場合、他の病気の可能性があります。ここではテニス肘以外で肘の外側が痛くなる代表的な病気について解説いたします。
肘の外側には何があるの?
テニス肘の原因となる手首や指を伸ばす筋肉・腱の他、
- 外側側副靭帯
- 橈骨神経
- 滑膜ひだ
など、様々な構造が密集しているため、原因を見極めるのが難しい場合があります。
靭帯が原因の痛み:後外側回旋不安定症
肘の外側には、関節を安定させる靭帯が集まっています。
ここが何らかの理由でいたんでしまうと、肘が不安定になり、痛みの原因となります。
脱臼などのケガが原因としては多いですが、仕事などで繰り返しの負荷が肘に加わっていると、徐々に靭帯がダメージを受け、関節が不安定になることがあります(後外側回旋不安定症)1。
テニス肘の治療として行われるステロイド注射が原因となることもあります。
テニス肘では上から物を掴んで持ち上げる際の痛みが典型的ですが、
靭帯損傷では、買い物袋を持つ時のように、手のひらを上にむけて物を持ち上げる時に痛みます。
また椅子から手をついて立ち上がる時などに、関節がずれる・不安定な感じをおっしゃる方もいます。
神経が原因の痛み:橈骨神経管/後骨間神経症候群
別ブログで触れましたが、肘の外側には橈骨神経が通っており、神経の刺激で肘の外側が痛くなる事があります。
しびれや筋力麻痺が発生することは少なく、テニス肘との区別が難しい病気ですが、テニス肘よりやや離れた場所に痛みがでます。
関節が原因の痛み:滑膜ひだ症候群
上腕骨と橈骨の間に、滑膜ひだというものがあります。詳細はまだわかっていませんが、関節のクッションの役割をすると考えられています。
このひだが使いすぎやケガなどで炎症をおこすと分厚くなり、痛みや引っかかり感を出すことがあります2。
骨の変形による痛み:内反肘
子供の時に肘の骨折をすると、成長するにつれて肘が変形してくることがあります。
肘を伸ばした状態だと、正常では外側にすこし「くの字」に傾いていますが、これが反対に傾いているのが内反肘です。
見た目以外、特に支障をきたさない事も多いのですが、スポーツや仕事がきっかけとなって痛みが出てくる場合があります。
放置すると靭帯も緩んでくる場合があり、手術が必要となることもあります3。
いかがでしょうか?
肘の外側が痛くなる原因として、テニス肘以外にもたくさんあります。いずれも比較的まれな病気ではありますが、テニス肘の治療を受けているのになかなか良くならない!という方は、一度手外科専門医の診察を受けてみてはいかがでしょうか。
(文責・イラスト:院長)
参考文献
- Elbow lateral collateral ligament injuries.
Reichel LM, Milam GS, Sitton SE, Curry MC, Mehlhoff TL.
J Hand Surg Am. 2013 Jan;38(1):184-201 - Elbow synovial fold syndrome.
Cerezal L, Rodriguez-Sammartino M, Canga A, Capiel C, Arnaiz J, Cruz A, Rolón A.
AJR Am J Roentgenol. 2013 Jul;201(1):W88-96. - Lateral collateral ligament reconstruction in atraumatic posterolateral rotatory instability.
Chanlalit C, Dilokhuttakarn T.
JSES Open Access. 2018 Apr 6;2(2):121-125.