親指のつけ根が痛い!〜母指CM関節症とは〜
- 2023年10月18日
- 手の病気・ケガ
目次
ペットボトルのキャップを開ける、洗濯バサミをつまむ、ビンのフタを開けるといった動作で、親指のつけ根が痛くなることはありませんか?
関節の軟骨がすり減ったり、骨が変形する母指CM関節症かもしれません。
母指CM関節とは?
親指には3つの関節があり、いちばん付け根の関節を母指CM関節と呼びます。
馬の鞍(大菱形骨)に人(中手骨)がまたがっているような構造で、靭帯が2つの骨をつなぐ手綱の役割をしています。
この構造とたくさんの筋肉が、親指の自由な動きを可能としているのです。
大きく動くぶん、母指CM関節には非常に大きな負荷が加わります(親指先端の12~13倍)。
母指CM関節症はなぜ起こる?
原因は一つではありません。
原因・リスクに関して多くの研究があり、母指CM関節症になりやすいリスク因子として、
- 女性
- 40歳以上
- 先天的な関節のゆるさ
- 外傷
- 母指への繰り返し負荷(仕事、スポーツ、趣味等)
などが挙げられており、これら複数の要素が組み合わさり発生するのです。
どのように進行する?
上記のように原因は様々ですが、靭帯のゆるみから始まると考えられます。
- 靭帯がゆるむと関節が不安定になり、関節に炎症が起きます。
- 進行すると関節のズレが発生します(亜脱臼)。
- 炎症の持続により軟骨のすり減りや変形が進行してきます。
母指CM関節症の症状は?
痛み
最も多い症状です。母指CM関節には、指先の10倍以上の力が加わるので、
- ペットボトルのキャップを開ける。
- 洗濯バサミや爪切りをつまむ。
- ビンのフタを開ける。
- 手をついて立ち上がる。
といった動作で痛みが出やすいです。
母指CM関節症の症状は、利き手でない方に多いとされています。
”右利きなのに、何で左が痛いの?”と質問されることがありますが、不思議なことではないのです。
変形
関節の亜脱臼や骨棘によって、親指のつけ根がでっぱってきます。
親指は力をぬいた自然な位置だと、なめらかなカーブ状の並びとなるのが普通ですが、関節が亜脱臼するとバランスが崩れ、ジグザグの並びになります。
親指の開きが小さくなるので、大きな物がつかみにくくなりますし、力も入れにくくなります。
第二関節(MP関節)で開きを補おうとして、この関節の反り返りが強くなり、痛みが出ることもあります。
病院で治らないと言われたけど、治療法はあるの?
「治らない」「手術しかない」と他院で言われ、当クリニックを受診される方は少なくありません。
「完全に元の形には戻らない」という意味では「治らない(直らない)」というのは正解です。しかし人体は機械と異なり、形が元通りにならなくても症状が改善することはよくありのです。
「治る」というのは形をもとに戻すことではなく、「痛みや機能が改善し、元の生活を送れるようになる」ことだと考えています。
変形を物理的に矯正するには手術しかないわけですが、母指CM関節症の患者さんで最終的に手術が必要となる方は10~20%です。
そのため、当クリニックでは手術以外の治療をまず行う方針としております。
クリニックでの治療の進め方
ハンドセラピィ(リハビリ)
ハンドセラピストが作成するスプリント(装具)装着による関節の保護
硬くなった筋肉や関節をゆるめたり、不安定な関節に対する筋力トレーニングといったリハビリを行います。
関節の状態にもよりますが、3~6ヶ月継続します。
詳しくはコチラ
ステロイド注射
ハンドセラピィで痛みの軽減が乏しい場合、関節へステロイド注射を行うことがあります。
手術
ハンドセラピィやステロイド注射での改善が乏しい場合、手術治療を検討します。詳しくはコチラ
PRP療法
近年注目されている再生医療の一つです。効果には個人差がありますが、どうしても手術は避けたい・手術の前に出来ることはないかと希望される患者さんには選択肢の一つです(自費診療)。
詳しくはコチラ
手術を100%回避できる確実な方法は現在のところありませんが、諦めずに手外科専門医の受診をおすすめいたします。
(文責・イラスト:院長)