クライマーの手のケガ 腱鞘損傷|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

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クライマーの手のケガ 腱鞘損傷|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

クライマーの手のケガ 腱鞘損傷

オリンピック種目にもなり、スポーツクライミングがブームとなっていますが、手にトラブルが起こりやすいスポーツです。ここでは、クライミングのケガで最も多い、腱鞘損傷について説明いたします。

腱鞘って何?

指を曲げる屈筋腱を骨に近い位置に維持する事が、腱鞘の役割です。腱鞘があることによって、屈筋腱を引っ張る筋肉の力を、関節を曲げる力に変換する事が出来ます。

指にはたくさんの腱鞘がありますが、重要なのが、A2、A3、A4と呼ばれる部分です。

なんでクライミングは指に負担がかかるの?

クライミングには様々なグリップが用いられますが、指に最も負担がかかるのが、フルクリンプと呼ばれる方法です。

フルクリンプでは、屈筋腱が骨から離れようとする力が強くかかります。その力は30-40kg程度あるとの研究もあります。

どうやって腱鞘がいたむの?

フルクリンプで腱鞘に加わる力は、腱鞘が断裂する一歩手前であるとされており1、指がホールドから外れたり、足を滑らせると、腱鞘が損傷・断裂してしまいます。
指の長さや位置などの理由で、中指と薬指に多いです2

症状は?

痛み

腱鞘が損傷した瞬間、痛みと腫れが起きます。「音が聞こえた」とおっしゃる方も多いです。

握力・可動域低下

腱と骨の距離が拡がるため、筋肉の力が有効に伝達されなくなり、握力と指の関節可動域が悪化します。

どうやって診断するの?

エコー検査が有効な診断法です

正常では腱と骨は接して写ります。

腱鞘が断裂すると、腱が浮き上がって見えます。

どうやって治療するの?

損傷の程度、いたんだ腱鞘の数によって異なりますが、手術せずに治療出来る事が多いです。

手術以外の治療

  • 2週間程度、指を伸ばした状態で固定します。
  • その後、テーピングや装具で指を保護しながら、リハビリを開始します。
  • クライミングへの復帰は2-3ヶ月必要です。

手術治療

  • 複数の腱鞘が断裂している場合、手術となる事があります。
  • 断裂した腱鞘は縫えない状態なので、他の部分から腱などを採取し、新しい腱鞘を作ります。
  • クライミング復帰は半年近くかかります。

予防法は?

トレーニング不足、手の使いすぎがリスク因子とされており、準備運動や十分な休憩を取ることが重要です。

フルクリンプでのホールドを多用していないか、自分のスタイルを見直すのも有効かもしれません。

スポーツクライミングはダイナミックで魅力的なスポーツですが、手のケガと隣合わせです。このスポーツを長く続けるため、十分なトレーニングと予防に努めましょう。

「いためてしまったかな?」と思ったら、手外科専門医の診察を受けられることをオススメいたします。

(文責・イラスト:院長)

参考文献

  1. Injuries to the finger flexor pulley system in rock climbers: current concepts.
    Schöffl VR, Schöffl I.
    J Hand Surg Am. 2006 Apr;31(4):647-54.
  2. Hand injuries in rock climbing.
    Merritt AL, Huang JI.
    J Hand Surg Am. 2011 Nov;36(11):1859-61. 
前田 利雄

記事監修

院長 前田 利雄
(まえだ としお)

  • 昭和大学医学部卒 医学博士
  • 日本手外科学会認定 手外科専門医・指導医