スポーツによる手の障害 手のひらが痛い!有鉤骨鉤骨折
- 2020年6月19日
- 手の病気・ケガ
目次
野球やゴルフなど、道具を握って行うスポーツでは、様々な手のケガが発生します。ここでは、発見が遅れがちな骨折である、有鉤骨鉤骨折について解説いたします。
有鉤骨鉤ってどこ?
手の付け根には手根骨という骨がたくさんあり、小指側にある骨のひとつが有鉤骨です。イラストのように、突起が手のひら側に出っ張っており、この部分を有鉤骨鉤と呼びます。
なんで骨折するの?
バットやクラブを握り込むと、手のひらの小指側の肉球(小指球)部分に道具がちょうど当たります。
繰り返しのバットスイングや、ゴルフでダフった時などに、有鉤骨鉤にストレスが加わり、骨折してしまうのです。非利き手に発生することが多いです。
症状は?
痛み
小指球部分が痛みます。普段の生活ではあまり痛まない事も多く、発見が遅れる原因のひとつです。
しびれ
有鉤骨鉤のそばには小指・薬指の感覚をつかさどる尺骨神経が通っており、強く握り込んだ時などに、指先にひびくようなしびれが出ることがあります。
指のひっかかり
有鉤骨鉤は小指・薬指を曲げる腱の滑車の役割を持っており、骨折部分と腱に摩擦が生じ、引っかかり感が出ることがあります。骨折が放置されると、腱が切れてしまう事もあります1,2。
どうやって診断するの?
レントゲン
骨折の診断では、レントゲンがまず行われますが、この有鉤骨鉤は通常のレントゲン撮影だと、とても見にくい部位にあります。そのため、骨折しているのに捻挫や打撲という診断を受けてしまい、発見が遅れる可能性があるのです3。
CT
エピソードや診察から骨折が疑われる場合、CT検査を行うのが確実な診断方法です。
治療は?
有鉤骨鉤にはたくさんの靭帯や筋肉がついており、常にストレスが加わっている部位であるため、骨折が治りにくい場所です。しびれなどの神経症状の悪化や腱断裂のリスクもあるため、早めの治療が勧められます。
保存治療
骨折後すぐに診断され、ズレが殆どない場合、ギプスなどで手くびを安静に保ちます。2-3ヶ月の固定が必要となりますが、それでも骨折がつかない事もあります。
手術治療
この骨折は診断がつくまでに数ヶ月を要する場合もあり、発見された段階ではギプスなどの保存治療では治癒が望めない事が多いのです。
スポーツへの早期復帰を望まれる方も多く、折れた有鉤骨鉤を切除する手術が主流です。取っちゃって大丈夫なの?と思われるかもしれませんが、プロでもこの手術を受け、支障なく競技復帰している選手がほとんどです。
有鉤骨鉤切除の場合、スポーツ復帰までの期間は概ね2ヶ月とお考えください。
スポーツをしているが、長期間手のひらの痛みが続き、競技に支障があるという方、一度手外科専門医の診察を受けられてはいかがでしょうか?
(文責:院長)
参考文献
-
Baseball and softball injuries: elbow, wrist, and hand.
Trehan SK, Weiland AJ.
J Hand Surg Am. 2015 Apr;40(4):826-30. -
Hand and wrist injuries in golf.
Ek ET, Suh N, Weiland AJ.
J Hand Surg Am. 2013 Oct;38(10):2029-33. -
Hook of hamate fractures.
Klausmeyer MA, Mudgal CS.
J Hand Surg Am. 2013 Dec;38(12):2457-60