ブシャール結節の手術 〜人工関節置換術〜|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

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ブシャール結節の手術 〜人工関節置換術〜|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

ブシャール結節の手術 〜人工関節置換術〜

指が痛くなる原因として多いのが、DIP関節(第一関節)におこる「ヘバーデン結節」ですが、PIP関節(第二関節)の「ブシャール結節」もあります。

ヘバーデン結節の手術は、関節を固定するのがスタンダードですが、ブシャール結節の場合、関節を固定してしまうと、指の機能が大きく低下してしまいますので、動きを温存することの出来る手術が望ましいのです。それが「人工関節置換術」です。

人工関節って何?

いたんだ軟骨や骨を取り除き、金属などで出来た関節に取り替える手術で、高い除痛効果が期待できます。

膝や股関節にはよく行われる手術で、ご存知の方も多いかと思いますが、指にもあります。

どんなとき、どんな人に手術するの?

変形や痛みがひどく、リハビリや注射などで良くならない場合に検討されます。

膝や股関節の人工関節は、20年以上長持ちするのが普通ですが、指の人工関節は耐久性の問題が完全には解決されておらず、50歳以上の方に行う事が多いです。

手術すると何が良くなるの?

ブシャール結節の患者さんが治療によって改善したい要素として、

  1. 痛み
  2. 動き
  3. 見た目

があると思います。

現代の股関節・膝関節の人工関節は、どの要素も高いレベルで達成出来ますが、指の人工関節にはまだ課題があります。指の人工関節インプラント、手術法には様々なものがあり、「これがベスト」というものはまだ確立されていません。

痛みに関しては、インプラントや手術法によらず、かなり高い効果が期待できます。しかし動きや見た目の改善効果にはそれぞれ一長一短がありますので、以下に解説いたします。

人工関節インプラントの種類

表面置換型

膝や股関節と同様、本来の関節の形状を再建するタイプです。

安定性が高いため、関節の傾きを矯正しやすい・本来の関節に近い動きが得られる事などがメリットとなります。

ただ比較的新しいタイプなので、長期間経過したあとの結果がまだはっきりしていない面があります。

シリコンスペーサー型

柔らかいシリコン素材で出来た一体型です。古くから使用されており、10年単位での良好な結果が多数報告されています。

デメリットとしては、関節の傾きを矯正するのが難しい、長期間経過するとインプラントが破損することがある、といった点があります。

ただインプラントの破損がすぐに痛みや再手術につながるといったことは少なく、10年経過時点での再手術率は数%とする報告が多いです。

手術方法の種類

関節へのアプローチ法として、イラストのように背側・掌側アプローチ(切開)の方法があります。

背側アプローチのメリット・デメリット

メリット
  1. 増殖した骨(骨棘)を切除しやすいので、見た目の改善効果が高い
  2. 指を伸ばす伸筋腱の問題からくる変形(ボタンホール変形・スワンネック変形)を矯正出来る。

デメリット
  1. 曲がりの改善が得られない場合がある。

掌側アプローチのメリット・デメリット

メリット
  1. 比較的良好な曲がりが得られやすい。
デメリット
  1. 伸びは悪くなる傾向がある。
  2. 増殖した骨(骨棘)の切除がしにくいため、見た目の改善効果は低い。

お示ししたように、インプラントの種類・手術法にはメリット・デメリットがあります。患者さんがお困りの事をすべて解決出来ない場合があるのが現状であります。

当院では「シリコンインプラント」「掌側進入」を用いる事が多かったのですが、最近では「表面置換型インプラント」「背側進入」で手術を行う事が増えてきています。

手術を検討される際は、痛み以外の「動き」「見た目」といった要素もお考えいただき、主治医とよく相談されることをオススメいたします。

(文責・イラスト:院長)

参考文献:

  1. Long-term results of Swanson silicone arthroplasty for proximal interphalangeal joint osteoarthritis.
    Bales JG, Wall LB, Stern PJ. J Hand Surg Am. 2014 Mar;39(3):455-61.

前田 利雄

記事監修

院長 前田 利雄
(まえだ としお)

  • 昭和大学医学部卒 医学博士
  • 日本手外科学会認定 手外科専門医・指導医