手がしびれる病気 回内筋症候群って?
- 2020年5月29日
- 手の病気・ケガ
目次
親指から薬指がしびれる病気として、手根管症候群が代表的ですが、よく似た症状を出す病気として、回内筋症候群があります。比較的まれな病気ですが、手根管症候群の治療を受けているのに、なかなか良くならないという場合、この病気の可能性があります。
回内筋症候群とは?
肘には沢山の筋肉があり、この間をくぐり抜けるように通る正中神経が圧迫され、親指から薬指のしびれ、前腕の痛みや違和感、脱力などの症状が出る病気です。
肘には沢山の筋肉があります。図のように神経は筋肉の間を通っているため、重いものを持ったり、腕を回すような動作で筋肉が緊張し、様々な場所で神経が圧迫される可能性があります。
上腕骨に異常な骨の出っ張りがあり、これで圧迫されることもあります1。
しびれる範囲が手根管症候群とほぼ同じであるため、手根管症候群として診断・治療される場合があるのです。
どんな症状?
親指から薬指のしびれ
オレンジ部分のしびれがあります。手根管症候群と違うのは、グリーンの手のひら部分もしびれることです。
肘~前腕(手のひら側)の違和感・痛み
ねじ回しのような、前腕を回す動作で悪化する場合が多いです。
症状がひどくなると、手のひらを上にして寝ているだけで、痛みやしびれが出ることもあります。
手根管症候群と何が違うの?
- 手くび部分のしびれがあること
- 動作(下から物を持ち上げる、腕を回すなど)で症状が悪化すること
- 夜間や明け方には症状があまりないこと などがあります。
ただし、手根管症候群を同時に起こしている場合もあり、診断が難しい場合も多いです。
どうやって診断するの?
誘発テスト
肘周りの筋肉に負荷をかける動作を行ってもらい、症状が出るかどうかをみます。
神経伝導速度検査
神経を電気刺激し、神経の機能を調べる検査です。回内筋症候群で異常がでるのは、10%程度とされていますが、他の病気を除外するのに役立ちます2。
エコー検査・MRI検査
通常異常はでませんが、神経を圧迫する腫瘍などがないかを調べます。
治療方法は?
安静
症状が出る動作をできるだけ避けます。
リハビリテーション
原因と考えられる筋肉をストレッチしたり、神経の滑りを改善するリハビリを行います。
ブロック注射
エコーを見ながら、局所麻酔・ステロイドを神経の周囲に注射します。
手術
安静やリハビリで改善する方が多いのですが、どうしても改善しない場合、手術で神経の圧迫を取り除きます。有効率は90%程度とされています3。
腫瘍などのできものが原因の場合は、手術が必要となる事が多いです。
回内筋症候群は稀な病気ですが、しびれなどの症状が手根管症候群と非常に似ています。
そのため、よくある病気で、診断も比較的容易な手根管症候群と診断・治療を受けている場合もあります。
手根管症候群と言われ、治療を受けているがよくならないという方、一度手外科専門医の診察を受けられてはいかがでしょうか?
(文責:院長)
参考文献:
- An unusual case of pronator syndrome with ipsilateral supracondylar process and abnormal muscle mass.
J Hand Surg Am. 2008 Jan;33(1):79-82.
- An unusual case of pronator syndrome with ipsilateral supracondylar process and abnormal muscle mass.
J Hand Surg Am. 2008 Jan;33(1):79-82.
- An unusual case of pronator syndrome with ipsilateral supracondylar process and abnormal muscle mass.
J Hand Surg Am. 2008 Jan;33(1):79-82.