手に優しい環境をつくりましょう 〜オフィスワーク編〜
- 2020年5月3日
- 手のコラム
目次
長時間のパソコン作業は疲れますね。オフィスワークでは、手にも様々な影響が出ます。ご自分の環境を一度見直してみませんか?
パソコン操作にともなっておきる症状として、肩こりや眼精疲労などが注目されますが、手のトラブルも増加してきています。今回は、マウスやキーボード操作などで発生する手のトラブルについて説明します。
マウス
マウスの大きさや形状は様々で、自分にあったもの、使い方をしないと、手の痛みやしびれにつながる可能性があります。代表的な持ち方は図の通りです。
ご自分のマウスの持ち方を確認してみましょう。それぞれ利点と欠点がありますが、当クリニックでは”かぶせ持ち”をオススメします。手のトラブルを避けるためのポイントを説明します。
腕から指先まで、テーブル・マウスに接触させる
接触面積が小さいと、肩から手をぶら下げる形になるため、肩こりなどにつながります。
手くびを起こしすぎない
手くびを起こした状態で指を酷使すると、腱鞘炎やてのしびれを引き起こす手根管症候群につながる可能性があります。必要に応じて、リストレストやタオルを手くびの下にしきましょう。
手くびを左右に振りすぎない
マウスの移動に、手くびを左右に振る動作を多様すると、手くびの腱鞘炎(ドゥ・ケルバン腱鞘炎)や手くびの小指側にあるTFCCというクッション部分の炎症に繋がります。
手くびだけでなく、腕から先全体で動かすようにしましょう。
エルゴノミクスマウスを導入する
余裕のある方は、手くびや指が自然な位置になるエルゴノミクスマウスの導入をオススメします。
キーボード
通常のキーボードは、キー配置が平行であるため、そもそも手に優しいとは言えません。タイピング時の注意点として以下があります。
手くびを小指側に傾けすぎない
ふつうのキーボードでは、少なからず手くびを尺屈(小指側に傾ける)しなければなりません。この角度が強いと、マウス同様、ドゥ・ケルバン腱鞘炎やTFCCの炎症につながります。一度ご自分の手くびの傾きを確認してみましょう。
根本的な解決策としては、手くびを尺屈しなくてすむエルゴノミクスキーボードの使用があります。医学的にも有効性が報告されています1。
手くびを起こしすぎない
手くびを強めに起こした状態でタイピングを続けると、肘の外側が痛くなることがあります。これはスポーツでよく発生するテニス肘の症状と一緒です。手くびをおこす筋肉と肘の骨の境目にストレスが加わるために発生します。
キーボードの傾きと手くびの神経の関係を研究した報告では、キーボードの傾きが大きいほうが、手のしびれの原因となる神経に及ぼす影響が大きいとされています2。
手くびの下にパームレストやタオルを敷いたり、キーボードの傾きを小さくし、手くびをあまり起こさずにタイピング出来る環境にしましょう。
ちょっとした工夫で、手への負担をへらすことが出来ますので、快適に仕事をするため、一度ご自分の環境を見直してみてはいかがでしょうか?
(文責・イラスト:院長 前田利雄)
※マウス等の写真はすべて、株式会社サンワサプライ様の許可を得て掲載しております。
参考文献:
-
Effectiveness of an ergonomic keyboard for typists with work related upper extremity disorders: a follow-up study.
Ripat J, Giesbrecht E, Quanbury A, Kelso S. Work. 2010;37(3):275-83. -
Impact of keyboard typing on the morphological changes of the median nerve.
Yeap Loh P, Liang Yeoh W, Nakashima H, Muraki S. J Occup Health. 2017 Sep 28;59(5):408-417.