爪が痛い!? グロムス腫瘍かもしれません
- 2020年5月3日
- 手の病気・ケガ
指先に物があたったり、寒いと爪のあたりが痛い場合、グロムス腫瘍の可能性があります。比較的まれな病気ですが、なかなか診断がつかず、複数の病院を受診される方もいらっしゃいます。
グロムス腫瘍とは?
主に爪の下に出来る、痛みをともなう良性腫瘍です。
80~90%は爪の下に出来、またミリ単位の小さな物が多いため、診断がつきにくい病気です。悪性となることはありません1-2。
放置するとどうなる?
腫瘍が自然に小さくなったり、なくなることはありません。
放置すると、骨や爪の変形、指のやせ(萎縮)につながることがあります。
原因は?
原因は不明です。
皮膚の中にある、体温調節の役割を持つグロムス体と呼ばれる部分から発生します。
どうやって診断する?検査は?
様々な部位の色々な検査を受けても、なにも見つからずに”原因不明” ”気のせい”などと言われてきた患者さんも多くいらっしゃいます。
グロムス腫瘍の診断に最も重要なのは、患者さん自身に教えていただく症状や経過であり、手外科専門医であれば、問診だけでおおよその診断がつけられる場合も多いです。
診察
爪の変色
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腫瘍のある部分が青っぽく変色することがあります。
爪の変形
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爪の下に腫瘍があると、爪が波打ったり、割れたりすることがあります。
Love’s pin test
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腫瘍があると思われる部分をピンやペン先で圧迫すると、痛みが再現されます。
Cold test
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指を冷たい水につけたり、氷を当てたりすると、痛みが悪化します。
検査
レントゲン
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腫瘍そのものはレントゲンに写りませんが、腫瘍が骨を圧迫していると、その部分が凹んでいることがあります。
MRI検査
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最も行われている検査ですが、腫瘍のサイズが小さいと写らない場合もあります。MRIでは、1/3の腫瘍は見つけられなかったとする報告もあり3、MRIで異常がないからと言って、100%腫瘍がないとは言えません。
エコー検査
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エコー機器の発達により、最近行われるようになってきました。血流が増加した、やや黒っぽい影として写ります4。
治療法は?
グロムス腫瘍は自然になくなることがないため、手術で摘出する以外に治療法はありません。
爪の下に腫瘍がある場合、腫瘍部分のみ爪を一旦外し、摘出後に爪を戻して縫合します5。腫瘍が指の脇の方にあれば、爪を外さない手術が可能な場合もあります。
当クリニックでは、局所麻酔での日帰り手術を行っており、所要時間は30分程度です。
グロムス腫瘍は、非常に小さい場合があり、MRIなどの検査で100%見つかるとは限りません。実際、MRIでの異常はないものの、痛みで長年悩んでおられた方が、当クリニックで手術を受けられ、1mm程度の腫瘍を摘出したというケースもあります。
再発はする?
残念ながら、手術をしても再発することがあります。
同じ指で再発する場合、以前とは違う部位に発生することが多いとされています。
腫瘍が出来た場所や、手術方法で再発率に差はないようです6。
グロムス腫瘍を疑う場合、当クリニックでも検査は行いますが、患者さんにお尋ねした経過と、診察所見を最も重要視しています。指先の痛みで困っている方、検査で異常はないので様子をみましょうと言われている方、一度ご相談ください。
(文責:院長)
参考文献:
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Subungual glomus tumor.
Netscher DT, Aburto J, Koepplinger M. J Hand Surg Am. 2012 Apr;37(4):821-3 -
Subungual Tumors: An Algorithmic Approach.
Hinchcliff KM, Pereira C. J Hand Surg Am. 2019 Jul;44(7):588-598. -
Characteristics of glomus tumors in the hand not diagnosed on magnetic resonance imaging.
Trehan SK, Athanasian EA, DiCarlo EF, Mintz DN, Daluiski A. J Hand Surg Am. 2015 Mar;40(3):542-5. -
The use of ultrasonography in preoperative localization of digital glomus tumors.
Chen SH, Chen YL, Cheng MH, Yeow KM, Chen HC, Wei FC. Plast Reconstr Surg. 2003 Jul;112(1):115-9 -
Prevention of postoperative nail deformity after subungual glomus resection.
Tada H, Hirayma T, Takemitsu Y. J Hand Surg Am. 1994 May;19(3):500-3. -
The anatomic location of digital glomus tumor recurrences.
Gandhi J, Yang SS, Hurd J. J Hand Surg Am. 2010 Jun;35(6):986-9.