TFCC損傷とまぎらわしい手くびの痛み 尺側手根伸筋腱の障害
- 2020年7月4日
- 手の病気・ケガ
目次
「手くびの腰痛」ホントにTFCC損傷?でも解説しておりますが、手くびの小指側の痛み(尺側部痛)には様々な原因があります。尺側手根伸筋腱のトラブルは比較的多く、症状もTFCC損傷に似ていることから、間違った診断を受けることもあります。
尺側手根伸筋腱って何?
手くびの小指側にある尺側手根伸筋腱は、手くびを反らせたり、小指側に傾ける作用があります。
腱は骨の溝にそって動き、まわりを下層腱鞘という「さや」に覆われています。
この部分は前腕の動きによって変化します。前腕を回外(手のひらを上に向ける)すると、骨の位置関係が変化し、腱の走行は約30度傾きます。
物を下から持ち上げる時など、この傾きによって発生する緊張が、手くびを安定させるのですが、腱へのストレスは大きいのです1。
また、下層腱鞘はTFCCの一部であるため、この部分の炎症やケガは、TFCC損傷と診断されていまうことがあります。
なぜ腱をいためてしまうの?
手くびを返す動きや、重いものを持ち上げる動作の繰り返しによって、この部分にストレスが加わります。
テニスやゴルフなど、道具を使って手くびに負担のかかるスポーツでもよくいためてしまう場所です。
テニスでは、ボールにスピンをかけるために急激に前腕を回旋した時などにいためやすいです。ゴルフでは、ダフってしまった時にいためてしまう事が多いようです。
障害のタイプ
腱炎
前腕を回外すると、正常でも腱は骨の溝からすこしずれますが、繰り返しの動作によって、腱とその表面にある伸筋支帯という部分で摩擦が発生し、炎症が起きます。
亜脱臼・脱臼
ケガや繰り返しのストレスにより、下層腱鞘が損傷し、腱が大きく溝から外れてしまいます。一度のケガで発生する場合、ポンっと音がしたという方もおられます。
診断方法は?
腱炎の診断
手のひらをあわせ回転させると、手くびに痛みが出ます。
指を大きく開き、外から抵抗を加えると痛みが出ます2。
亜脱臼の診断
腱の亜脱臼の場合、手くびを動かした時の腱の動きを観察出来るため、エコー診断が役に立ちます3。
治療はどうするの?
腱炎の場合
安静やスプリント(装具)での固定を3-4週間行います。痛みが落ち着いてきたら、少しずつリハビリを開始します。
ステロイド注射は痛みの緩和に有効ですが、繰り返しの注射は腱を逆にいためてしまう場合もあるので、注意が必要です。
腱炎の多くはこれらの治療で治りますが、繰り返してしまう場合、手術が必要となることもあります。
亜脱臼の場合
ケガしてすぐであれば、脱臼の程度にもよりますが、スプリントによる固定とリハビリで治る場合があります。
テニスの錦織圭選手は、この腱の脱臼を手術せずに治したそうです。
古いケガや、脱臼の程度がひどい場合、手術が必要となることがあります。
手くびの尺側部痛があり、TFCC損傷と診断されたが、なかなか治らないという方、一度手外科専門医の診察を受けてはいかがでしょうか?
(文責・イラスト:院長)
関連ブログ
参考文献
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The ECU synergy test: an aid to diagnose ECU tendonitis.
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